第33章 episode0
数日後、仕事が終わって帰ると家の前に人影。
足元には幾つかの荷物らしい大きめのバッグが置いてあった。
「クローくん?どうしたの?家出?」
「この歳で、んなガキみたいな事してたまるか。」
目的はなんとなく分かっていたけど、私に気を使ってくれたのだと思うと申し訳なかった。
「学校から近くて便利だし、安く住ませて貰えるって事なんで。
…改めて、センパイのトコに世話んなる事にしました。宜しくお願いしゃーっす!」
体育会系特有の威勢の良い挨拶に思わず笑って、家へと通す。
部屋を用意しながら本当に良いのか何回か聞いたけど、近くて便利、とか、安く住める、と同じ言葉を繰り返して引いてくれなかった。
ご両親にも高校時代の先輩とルームシェア、と言って出てきたそうだ。
私から誘った面もあるし、押し問答していても仕方がないから受け入れる事にした。
こうして、私達の二人暮らしが始まった。