第33章 episode0
「…私の家、部屋余ってるし、この駅も近いんだよね。徒歩10分くらいで。
どうせ、部屋借りる予定なら家に来ない?」
「あのな、一応でも男を部屋に入れるリスク分かってんの?」
怒ったような声が降ってきた。
確かに軽率だった。
気軽にこうやって話してはいるけど、私達は異性である。
警戒しなきゃいけない間柄じゃないにしろ、簡単に口に出すことじゃ無かった。
「ごめん。一緒に住んでくれる人がいたら家売らなくて済むかなー…なんて、軽く考えてた。」
この時、自分がどんな顔をしていたかなんて分からない。
だけど、きっと彼を困らせるような顔だった。
「…まぁ、部屋も別で、家賃も安く済むなら候補に入れても良いぜ?内覧は可能ですか、センパイ。」
それは、彼の精一杯の優しさ。
見上げたその人は、相変わらずの笑顔で笑ってた。
「…勿論。何なら今からでもどーぞ。良かったら、そのまま泊まって明日は家から学校行けば?」
迷惑は掛けられないから冗談で返したつもりだった。
さっき帰らなきゃって言っていたし、部屋に男を入れるリスクについて話した人が気軽に泊まるなんて思ってなかった。
それなのに、彼は家までついてきて。
更に本当に泊まって翌朝普通に学校に行った。