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第32章 始まりの、この場所で(木葉エンディング)


‐木葉side‐

…で、結局こうなるのか。
と、言いたい展開だ。

さっき、10年の片想いを実らせて、やっと熊野と一緒にいられるってなったのに…。

4人で歩く帰り道。
現在、俺の彼女サンは木兎と赤葦の間におります。
しかも、俺だけ加われない元同居人トークを繰り広げてやがる。

イライラしながら辿り着いた熊野の住んでる、あの家。
元から一緒に飯食う予定だったらしいし、それを却下する程のちっさい男になりたくなかった。

「作んの、手伝うか?」

キッチンに籠った熊野に掛けた言葉が、数時間振りの会話のきっかけ。
その筈だったのに、熊野は微妙な顔をして首を振った。
言葉ですら、返してはくれない。

まぁ、喋るの苦手なのは相変わらずか、くらいで。
気にしないようにしていた。

だが、準備が済んで食事ってなった時。
普通に、木兎とか赤葦とは会話してた。

邪魔にならねぇ程度に、話し掛けてみると、俺を優先しようとしてはくれる。
体ごと、こっち向いて聞く体勢を取ってくれるから、それは分かる。
でもな、俺は‘会話’がしたいワケで。
一方的に喋り続けたいんじゃねぇんだよ。

そんな感じのまま、進む食事。
ヤケになって、酒を煽ってしまった。

熊野と話がしたい、なんて。
木兎や赤葦の前で、昔みたいに泣きながら訴える事は出来ないちっぽけなプライド。
席に着いてたら、本気で涙まで出そうで、潰れたフリしてソファーに横になる。

どうせ、まだまだお前等は話すんだろ、くらいの卑屈な思考しか浮かばなかったが。
流石にアイツ等もバカじゃねぇようで、俺が移動して数分で2人は帰っていった。

見送りを終えて、リビングに戻ってきた足音が近付く。
薄く開いた目から見えた、俺に触れようとする熊野の手。
それを掴んで、胸元へ引き寄せる。

「お前、さ。俺と付き合ってんだよ…な?なんで、アイツ等とは普通に話せんのに、俺とは出来ないワケ?」

2人きりになって、やっと口から出せた嫉妬心。
俺は特別だから話をするのが恥ずかしい、とか。
可愛い事言う女じゃねぇけど、ちょっとだけ期待してた。

「…必要ないです。」

その期待を砕くのに、充分過ぎる、熊野の声で、一番聞きたくねぇ言葉が聞こえた。
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