第32章 始まりの、この場所で(木葉エンディング)
私はここで、木葉さんのものになりたい。
心だけじゃなくて体も、全部。
「木葉さん、シたいです。」
どうやって誘えば良いか分からないから直球勝負で言葉にした。
木葉さんの方は、驚いたみたいに目を何回も開閉してる。
「…あの、さ。俺ね、正直言うと、ココで熊野と、って妄想は何回もしたワケよ。ほら、高校生って妄想もオサカンだし。
でも、な…。」
やっと聞こえた返答はお断りのようだ。
妄想してたなら、それを現実にしたって減るもんじゃないだろ。
そんな事を考える、親父思考の私。
「ココって、俺等が出会った大切な場所じゃん?綺麗な思い出の場所にしておきたいワケ。」
どうやら、木葉さんは、女の私より女みたいな思考のようで。
いや、男性の方が意外にロマンチストらしいから、これが普通なのか。
変な納得の仕方をして、ここでナニかをするのを諦めていた私の頬に柔らかい感触。
「だから、これだけでカンベンな。」
木葉さんは、口元を隠して照れたように笑っていた。
キスをされたのは分かる。
でも、どうせなら唇にしてくれないものか。
「…こっちは、嫌ですか。」
唇を触って場所を示す。
私から、唇を奪っても良かったけど。
ただでさえ、私の方が度胸があると言われたばかりで、こちらからしたら男のプライドに関わりそうだからしない。
いくらなんでも、それは可哀想だ。
「嫌ではない…ん、だが…。」
まだ渋られて、これが駅前でキスした男と同一人物なのか疑った。
あんな場所で、キス出来るんだから、ここでしても良いじゃないか、とまで思った。
木葉さんの視線が、階下に向いている事に気付くまでは…。