第32章 始まりの、この場所で(木葉エンディング)
2度ある事は3度ある。
だからこの場所に置いていこうと思った気持ちが、手放せなくなってしまった。
木葉さんの口から、同じ回数を表しているのにプラス思考になる言葉が出たから。
「1度目、2度目は失敗しても、3度目には達成出来る。」
意味を口に出してみると簡単に納得出来た。
どうせ手放せない想いなら、プラスに考えていた方がいい。
前に進むと決めたなら、マイナス思考も退散しないと。
目の前にいる木葉さんと視線を合わせる。
「3度目の今なら、叶えていいですか?」
「ソレ、俺のセリフな。」
ふっと息を漏らすように笑う顔が愛しくて。
私は、この人を忘れた事などないのだと、気付いた。
腰に腕が回ってくる。
少しずつ距離が近付いて、抱き締められた。
木葉さんの体温が、傍にある。
それが心地好くて、大人しく腕の中に収まっていた。
「好きだ。」
私の肩に顎を乗せるような状態で、耳元で一言。
木葉さんの声で、初めて聞く気持ちを伝える言葉。
わざわざ抱き締めて言っているのは、顔を見られないようにしているんだ。
耳が真っ赤なのは確認出来る。
私は顔が見たいのに。
「私も好きです。」
「俺の彼女になって下さい。」
「…顔、見せて下さい。ちゃんと、目を合わせて答えたいです。」
「…ヤダ。無理。今、超カッコ悪ィもん。余裕ねぇし。」
「その台詞自体が格好悪いとは思わないんですか。」
「…うっ。」
私に顔を見せてくれないまま、唸って固まってしまった。
少しして、腕が緩む。
体を離して見えた木葉さんの顔は、思った通り真っ赤で可愛らしかった。