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第32章 始まりの、この場所で(木葉エンディング)


‐木葉side‐

ただ、すぐに本題ってワケでもないようで。
勝手に人の分まで飲み物頼んで、乾杯してきやがった。

飲んで、今の仕事とか、アイツ以外の元同居人の話とか。
とりとめのない話ばっかしてくる。

「…お前さ。何しに来たの?」

しびれを切らしたのは俺の方。

一瞬だけ、時間が止まったように静かになって。

「木葉、りらちゃんに会う気ねぇか?」

ようやく聞けた本題には、首を横に振るしか出来なかった。

会う勇気、ねぇよ。

2度ある事は、3度ある。
また、‘あの言葉’に傷付けられるのはゴメンだ。

木兎は元々強引なヤツで、その後も俺を説得しようとしてきた。
それでも、首を縦には振らない俺を見て、帰っていった。

…が、その翌日。
また来やがった。
今度は、赤葦を連れて。

いや、お前は俺がいないままのが都合良いヤツだろ。

あぁ、木兎の暴走止めに来たか?
強引であれど、俺と熊野が、もう1度出会ったら困るもんな。

そんな予想は見事に外れて。
木兎と一緒になって、俺の説得をしにきてた。

木兎みてぇに、思い付くまま喋るヤツなら、こっちも理由を言わずに拒否ばっか返しゃいい。

だが、赤葦は違う。
冷静に、淡々と。
今の熊野が、誰かを無理矢理好きになろうとして、近場にいるコイツ等をターゲットにしてる事を語り。
その行動が、無理をしてるの見え見えで痛々しいと話した。
それで仕方なく選ばれても嬉しくないから、自分達の為にも会って欲しいって事だった。

熊野が、まだ俺の事が好きだから無理してるとは限らないだろ。

俺は、また過信して砕かれるのが…。

「…怖いんだ。」

ポツり、と。
漏れた本音。

これで、理解して引いてくれ。

「…では、木葉さん。賭けをしましょう。貴方が負けたら、りらに会わなくていい。」

そう、上手くはいってくれないようで。
赤葦は勝手に話を進めた。

…ん?
俺が、負けたら?
勝ったら、望み通り会わないんじゃなくて?

意味が分からなかったが、賭けの内容で理解は出来た。

成程、そういう事。
それなら、少しだけ期待してやっても良いかも知れない。

俺が勝ったら。
多分1度も言わなかった言葉を、アイツに伝えに行ってやろうか。
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