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第32章 始まりの、この場所で(木葉エンディング)


‐木葉side‐

分かってんだよ。
俺に必要なのは、何年経ってもアイツだけだって。
でも、アイツにとって俺は‘必要ない’んだ。

だから、追い掛けてくれなかった。
俺と一緒に出ていくって言ってくれなかった。

他のヤツよりは特別視されてんの分かってて、熊野が、俺を選んでくれるって過信してた。
他のヤツを立てておきゃ、カッコ良い顔出来るなって。
思ったのが、間違い。
同居してる皆を大事にしろって言った後じゃ、ついてきてくれ、なんか言えなかった。

そういう後悔ってーのは、年々増してくもんで。
未だに、前には進めないのだ。

たまに思い出しては、熊野への女々しい未練を自覚してショック受ける。
それでも仕事はちゃんと出来る辺り、もう立派に社畜である。

熊野の為に選んだ仕事だったが、こういう時に頭を使わず、体に刷り込まれた動きで済ませられんのは良かったと思う。
…んなワケで、本日も仕事中。

「木葉ー!お前に客ー!」

調理場に響いた、ホール担当の声。

「もうすぐ俺上がりの時間なんで、待ってて貰って下さい。」

本来なら、ちょっと挨拶に抜けるくらい問題ない。
だが、考える時間が欲しかった。

だって、なんか、嫌な予感しか、しねぇんだ。

嫌でも時間は進むし、客が来てる俺に、いらねぇ気遣いをくれた同僚が少し早めに上がらせてくれた。

諦め半分で、言われた席に行くと…。

嫌な予感、的中。

木兎が、そこに居た。

「おー!木葉、久し振りだな!まぁ、座れって。」

久々な上に、同じ女に惚れ込んで俺を完全に排除しようとしたクセに。
そんな事をしたなんて、気にも止めてない態度で俺に席を勧める。

まぁ、断っても聞かねぇヤツなのは分かりきってて、半分だった諦めを完全なものにして席に着いた。
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