第31章 似た者同士(月島エンディング)
突然、機嫌が悪くなるのはさっきの状況と似ていて、その時の会話との共通点をシャワーを浴びながら考える。
会話の内容自体は全く違うものだったし、私の喋り方が気にくわないとかだろうか。
いや、でも喋り方は昔から大して変わっていない。
他に思い当たる事は…。
そう考えている内に、ある1つの共通点が見えた。
気付いてしまうと単純な事で、早く確認したい気持ちで一杯だ。
風呂場から出ると、体をよく拭きもせずにバスローブを羽織ってベッドに近寄る。
横になってはいたけど、まだ起きていた月島くんは驚いていた。
ベッドに乗って、顔を覗き込むように近付ける。
「月島くん、ヤキモチ妬いたの。」
私が出した答えはこれ。
月島くんが不機嫌になった2つの会話の共通点は、他の男性の名前。
違っていたら、なんとも恥ずかしい勘違いだけど、今の内に解決しないといけないと思ったから、はっきり口に出した。
私の髪から雫が落ちて、月島くんの顔や枕に小さな水の跡を作る。
「…濡れたままこっち来ないでくれない?冷たいんだけど。」
確かにそう言われても仕方がない状態になっていた。
でも、欲しいのはそんな返答じゃない。
水を掛けた事を謝ったら、それで誤魔化されて話が終わってしまう。
黙ったまま、間近にある目を見詰めていた。
「…頭濡らしたままだと風邪ひくんじゃない?あ、ナントカは風邪ひかないからりらは大丈夫だったね。ゴメン。」
どうにかして私に離れて欲しいんだろう。
これは多分、照れ隠しだ。
妬いた、と言葉で答える事が出来ないから、話を逸らそうとしているんだと思う。
「風邪の心配してくれるんだ。黒尾さんみたいな保護者発言だね。」
こちらとしては、なんとしても答えさせたい。
他の男性の名前をわざと出してみた。
我ながら無理矢理絡めたとは思う。
「別に心配してなんかないよ。」
月島くんの眉間に皺が寄った。
やっぱり、不機嫌の原因はこれのようだ。
「君さ、黒尾さんみたいに心配してくれる人がいいなら、そっちいけば?」
続いた言葉は完全に怒っているようだった。
肩を押されて顔が離れる。
その隙に反対側を向かれてしまって、顔が見えなくなった。