第31章 似た者同士(月島エンディング)
目を覚ますと、一番に見えたのは鏡張りの天井。
体を起こして周りを見回すと、いやらしいホテルとかで、たまにある感じのベッドが殆どを占める部屋だった。
端の方に設置されたソファーに月島くんが座って、テレビを見ている。
「彼氏が運転してる車で爆睡とか有り得ないでしょ。」
「…ごめんなさい。」
私が起きた事に気付いて、一言目には嫌味だ。
自分が悪いのは分かっているから、これについては謝るしかない。
「ここ、どこ。」
「ホテル以外の何に見えるのか逆に聞きたいんだけど。」
分かりきった事を聞く私に呆れた顔をしていた。
テレビを消して近付いてくる。
雑音が消えた部屋の中ではその足音がよく響いた。
「家には連絡してあるから。明日はここから、駅まで送るよ。」
今晩はここで2人で過ごすのだと、遠回しのお誘い。
相変わらず逃げ道を作って直接的な事を言ってはくれない。
月島くんはベッドの手前、数センチを残して立ち止まった。
イエスもノーも言わない私に触れていいか分からないようだ。
拒否する理由はないけど、オーケーの表現方法も分からない。
「…お風呂、入ってくる。」
これが、私の意思表示の限界だった。
ベッドから降りて横を通り抜けようとすると、腕を掴まれる。
「一緒に入ろうか。」
「赤葦さんみたいな事、言わないで。」
オーケーを示したのが伝わったのは良いけど、新たなお誘いに関しては恥ずかしいもので。
それは嫌だと、似たような発言を繰り返す人の名前を上げた。
「…じゃ、りらが風呂に入ってる間に寝るから。起こさないでよ。」
一瞬、腕を掴む力が強くなる。
また不機嫌になったのは分かったけど、理由は不明だ。
理由が分からないまま謝っても意味がないし、また泣いてしまったら迷惑を掛けるから逃げるように風呂場に籠った。