第31章 似た者同士(月島エンディング)
宮城に滞在するのは一週間。
着いた当日こそ色々あったけど翌日からは平日で、月島くんは仕事があったし、本人よりもそのご家族にお世話になりながら過ごした。
その間、毎日同じ部屋で寝ているにも関わらず付き合っているらしい事は何一つない。
それどころか、扱いも何も変わっていないから初日の夜の話が本当にあったのか疑わしくなってきた。
そんな状態で迎えた最終日。
明日には私は東京に帰る。
この日は月島くんの休みで、観光がてら2人で出掛ける事になった。
と、言っても、すでに平日の内にお母さんの方が色々と連れていってくれていたから目的はない。
取り合えず的に車で移動していた。
一応は密室で2人きり。
関係を確かめるにはまたとないチャンスだけど、運転してる相手に変な事を言って事故でも起こされたらたまらない。
「りら、観光はどこ行ったの?」
「青葉城址、とか。後は何か…滝、見に行った。有名な所は大体お母さんが連れていってくれたよ。」
「松島は?有名だと思うケド。」
「行ってない。」
「じゃ、そこで。」
移動を始めてから十数分後、なんとなくで決めたような目的地。
そこに着くまでの間も、少しの会話はあったけど色気はまるでなし。
車を降りて並んで歩き出した時、一つだけ今までと違う事が起きた。
いつの間に、と思えるくらいごく自然に手を握られている。
指先を絡めたりとかはしない普通の繋ぎ方だけど、恋人らしい事は何もしてこなかったからか、凄く嬉しかった。
遊覧船が出ていたようだったけど、島にそこまで興味がなかったから乗らず、海が見える道を散歩する。
「りら、楽しい?」
「楽しくはない。」
「だろうネ。」
「でも、手繋げたから嬉しい。」
「…君ね、天然なのもいいケド、そういうのは僕以外にしないでよ。」
「黒尾さんにも言われるけど、どこが天然なの。」
「…そういう、分かってない所だよ。」
やっと会話が出来たと思ったら、何故か不機嫌になられてしまった。
原因が分からないから、機嫌を治してもらう方法も分からない。
お互いに無言のまま、車に戻ったけど、手を離せなかった。