第31章 似た者同士(月島エンディング)
電気を消して数分。
今日だけで起こった出来事が多すぎて寝付けない。
寝転がった姿勢のまま、少し高いベッドを見上げた。
月島くんもまだ起きていたようで、薄暗い部屋の中でも目が合ったのが分かる。
「…りら、一回しか言わないから、ちゃんと聞きなよ。」
眼鏡を外していても、私が起きているのは気付いたようだ。
小さいけど、はっきりとした声が聞こえる。
私が欲しがっている言葉を、きっと分かっている。
だから、何を言って貰えるかは分かって、言葉を遮るのは勿体ないような気がして頷いた。
「…好きだよ。お休み。」
ほぼ言い逃げのような形で、すぐに寝返りを打って背中を向けられる。
「私も…。」
自分の方も伝えていなかったと思い出して。
ちゃんと言いたいのに言葉が止まる。
そもそも、私は本当に月島くんの事を‘そう’思っているのか。
さっきの、告白まがいの言葉だって勢いみたいなものだ。
確かに、たまにしかない電話を楽しみにしている所は、ある。
それは、私を気にしてくれるのが嬉しいだけで、恋心とは違うんじゃないか。
否定が頭に浮かんだ時、涙が出そうな時の、鼻の奥が熱くなるような感覚。
そっか。
何で、今まで気付かなかったんだろう。
間違いなく、私は月島くんの電話を待っていて。
待つっていうのは、求めているって事で。
さっき、自分で言った通りだ。
昔、待っていた、求めていた人は、恋した人。
なら、今も、待っている、求めている人は…。
「好き。」
やっと、言えた。
当然のように返事はないけど、まだ寝ていないのは分かっている。
聞き取ろうとして顔を動かしたのが見えたから。
「お休みなさい。」
挨拶をして目を閉じる。
さっきまで寝付けなかった筈なのに、言葉一つで安心出来たようで、それからはすぐに眠りに落ちた。