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第31章 似た者同士(月島エンディング)


焦点が合わず、ぼやけてしまっても分かる、わざとらしい笑顔。

「…本物に、なってみる?」

からかっているように見える。

でも、ふざけるな、と怒ろうか迷ってしまった。
ただ拒否だけをして、人を傷付けるのは嫌だから。

答えないでいる内に顔が更に近付いた。
唇が触れ合うまで数センチ。
このまま黙って、キスくらいしても私としては問題ない。
だけど、きっと…。

「月島くんは、出来ない。」

思ったまま口から言葉が漏れた。
ピタリと動きを止めた月島くんの眉間には皺が寄っている。

「…出来ないって何?何か期待してた?」

私から離れて、今度ははっきり見える嫌味をたっぷり込めた笑顔。

月島くんは、いつもこうだ。
曖昧に暈した言い方ばかりして逃げ道を作ってる。
断られた時の事を考えて、直接的な表現は使わない。

言葉は月島くんの数倍下手だし、敵う訳がないのは分かっている。
それでも、逃げ道を潰して本音を聞き出したいと思った。

「期待した。」
「…ふぅん?何を期待したの?」
「月島くんが、ちゃんと言ってくれたら、こたえるよ。」

嫌味な反撃には慣れていても、こういう攻められ方は苦手だと知っている。
現に今、少しだけど表情が崩れている。

「…こたえる、ってどっちの意味?」

返事として答えるのか、気持ちに応じるのか、それを知らないと言わない気なんだろう。
そんなの、私だって知らないのに。

「言ってくれたら、分かると思う。」

私も曖昧な言葉を使う。
こんな所は似た者同士だ。

言い返してこないのは迷っている証拠。
後一押しなら、とっておきの確定事項を伝えよう。

「月島くん。」
「…何?」
「私、昔は木葉さんの事をずっと待ってた。」
「知ってるケド…。それが?」
「今は、月島くんの電話を楽しみにしてる。」
「…え。」
「もう同居人じゃないから、気にしなくてもいいのに連絡くれるの、嬉しい。」
「…何ソレ。告白のつもり?」

私は事実を言っただけだ。
だけど、言われて気付いた。
好きだった人と比べて、その人を過去、月島くんを現在、で表現する。
それは紛れもなく告白だった。
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