第31章 似た者同士(月島エンディング)
その後、到着したのは一軒の家の前。
表札には‘月島’の文字。
実家暮らしと聞いていたから、間違いなく隣の男の実家な訳で。
降りて、と一言で指示され家の前に立つ。
「ウチの親が、りらに会ってみたいってさ。」
ここまできてから、呼ばれた理由が判明した。
呆気に取られて声すら出てこない。
「あ、因みに彼女と勘違いされてるから。誤解は自分で解いてよね。」
いや、勘違いさせたのは月島くん本人でしょ。
それを解くのは貴方の役目じゃないか。
なんて、思っていてもまた言いくるめられるのが目に見えている。
溜め息を漏らして、先に入っていく背中を追った。
中に入ってみると、歓迎ムードで迎えられて、少し驚いてしまう。
月島くんの家族はもう少しクールな感じを想像していたから、アットホームな雰囲気が予想外過ぎた。
完全に彼女として扱われ、タイミングを失って誤解は解けないまま食事の時間になる。
手伝おうとしたけど私は‘今はまだお客さん’らしく、何もさせて貰えなかった。
先があるような言われ方をしたのが引っ掛かる。
そりゃあ、アラサーの息子が遠距離恋愛してる彼女を東京からわざわざ呼び寄せて、親に会わせるなんて‘お客さん’から‘家族’になるのが近い事を想像してもおかしくはないけど、そもそも付き合ってない。
その日は最後までそれを言い出せず、月島くんの部屋に泊まる事になった。
お風呂を借りてから案内された部屋に行くと、ちゃんと布団が用意されていて安心する。
どうせ付き合ってるなら一緒に寝る、なんて思われていなくて良かった。
「オツカレサマデシタ。」
布団の上に座るとベッドの方から相変わらずの嫌味な声。
「疲れたのは誰の所為だと。」
「僕が悪いって言いたいの?勝手に勘違いしたのは、ウチの家族の方デショ。嫌なら早く言えば?」
「あんなに歓迎してくれてる人達に言える訳ない。」
「じゃ、どうするつもり?こっちにいる間だけ、恋人ごっこでもする?
…それとも…。」
機嫌が悪くて顔も向けずに喋っていたけど、途中で話を止められてしまうと気になる。
様子を見ようと振り向くと、いつの間にか横に来ていて間近に顔があった。