第31章 似た者同士(月島エンディング)
私は今、宮城県にいる。
知人なんて1人しかいないこの地に来たのは、その知人に呼び出されたからだ。
事の発端は1ヶ月程前。
たまに掛かってくる電話で突然言われた言葉だった。
『りら、来月はバイト休めるの?』
「まだシフト希望出してないから可能だけど、何で。」
『こっち、旅行がてら来なよ。僕が案内してあげるから。』
「…は?」
『何なら交通費くらい出してあげてもいいケド。』
「何で。」
『何でも。どうせ暇デショ。』
「いや、バイト…。」
『休めるか、先に聞いたの忘れてない?』
こんな感じの会話で言いくるめられ、更に翌々日には新幹線の指定席券が送られてきた。
断りきれずに現在に至る訳だ。
呼び出された理由も分からず、見知らぬ土地でその人を待っている。
駅の出口は指定されたから、そこまでは辿り着けたけど、その後に何をすれば良いかも分からない状態で困っていた。
連絡しようと手元でスマホをいじり始めた時、影が落ちてきて誰かが来たのが分かる。
顔を上げると、それは呼び出してきた張本人で。
「…月島くん。人を呼ぶなら待たせないで。」
「それはスミマセンでしたー。」
全く悪いと感じていない素振りの謝罪が聞こえた。
そして、他に何を言うでもなく、私の手から荷物を取って歩いていく。
「…車、止めてるから。」
呆然として反応が遅れた私を振り返って一言。
その前に呼んだ理由を教えて貰いたいものだけど、この場に荷物も無いまま置いていかれても困るから後を追った。
車に着くと、後部座席の方に荷物が乗せられて、私が乗る前にドアが閉められる。
これは、助手席に座れって無言の圧力だ。
別に何処に座ろうが問題はないから、黙って従った。
運転は当たり前だけど月島くんがして、動き出した車の中でも無言の時間が続く。
嫌な訳じゃないけど、何故だか落ち着かない。
「…何?」
窺うように隣を見ていると、やっと沈黙が破られた。
だけど、ここまで理由を聞こうとしてもはぐらかし誤魔化しできた月島くんが、何かを聞いた所で答えるとは思っていない。
他の質問が思い浮かぶ訳もなく、そのまま過ごした。