第30章 執着心への執着心(赤葦エンディング)
あぁ、そうか。
一応でもお付き合いしているからといって、すぐに相手に発情する訳はない。
それでは、完全に獣だ。
私は多分、この人の事をいつの間にか好きになっていた。
他の人に差し出されそうになって腹が立ったのが、その証拠だろう。
赤葦さんの、恐ろしいくらいの執着心が私に向いていないと、もう生きていけない。
そう、思ってしまう程、彼が好きだ。
「…京治。早く、寝よう。」
精一杯の甘えた声を出して腕を広げる。
触れ合いたい。
身体の奥底まで。
私の全てをこの人のものに、したい。
意味は分かってくれたようで、私の目の前に座ってくれた。
顔が近付いて、唇が重なる。
「そういう可愛い事をされて止まれる程、大人じゃないから。」
「止まらなくていい。貴方の手で私を幸せにして。私の幸せを勝手に他の人に託さないで。」
唇が離れても、お互いに吐息を感じられる程の至近距離で目を合わせる。
「託さないよ。りらはもう、俺のものでしょう?」
「京治のもの、だよ。全部あげるから、貴方の執着心をずっと私に向けて。ずっと、私だけを想って。」
「言われなくても、そうするよ。」
ゆっくりと2人で布団の上に倒れて、体を重ねた。