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第30章 執着心への執着心(赤葦エンディング)


この人は、私と木葉さんが再会してやり直せるようにしていた。

赤葦さん自身の気持ちは、どうでもいいのか。
それとも、こんな賭けの代償で諦められる程度の気持ちしか、私に向けてくれていなかったのか。
ただ単に私に対してあるのは執着だけで、恋愛的な興味はないのか。
ラブの意味で好きとか、好きにさせてみせるとか、そう言っていたのは嘘だったのか。

それがとてつもなく悔しくて、受け取ったサイコロをコマに当てるように放った。

「…コマの位置、分からなくなりましたね。」
「俺は覚えてるよ。」
「私は覚えてません。だから、確認も出来ません。今回の勝負は流れた、という事で。」

手早くテーブル上のボードを片付ける。
続ける事が出来なくなるように。

「でも、りらは後一手で勝ちだった。なら、賭けの結果はりらの勝ち。…木葉さんに会いに行こう。」
「勝負はついてません!」

どうしても、私の勝ちにして収めたいようだ。
それが腹立たしくて声を荒げた。

あんなに私を見てくれていたのに、もういらないの。
他の人に簡単に差し出せる程度のものだったの。

さっきまでは木葉さんに会いたいのだと思ったのに、そんな気持ちはなくなって。
頭の中は赤葦さんで一杯だった。

「どうしても、勝敗をつけたいなら。ゲームを途中で放棄した私の負けです。」

自分の負け宣言は、今の賭けの内容を思うと告白と同じようなものだ。

でも、どうしても。
この人に、私を諦める宣言をさせたくなかった。

赤葦さんは、窺うような視線を向けている。

「りら、分かってる?」

私が、理解しているか知りたかったようだ。
敗北宣言は、恋人としてのスタートになる、と。

「分かってます。」
「そう。」

頷きながら返すと、赤葦さんの唇が一瞬だけ笑った。
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