第30章 執着心への執着心(赤葦エンディング)
嘘だ、嘘だ、有り得ない。
勝負を始めてから、30分もしない内に私の頭の中を巡った言葉だ。
あの、赤葦さんに後一手で勝てそうだ。
何か賭けたら必死になるかも、とか言われたけど本当だったのか。
今までは酒代程度だったから真剣になりきれなかったのか、私は。
あれ、でも…。
赤葦さんも逆転出来る道がある。
それに気付いていない事はないだろう。
次のサイコロの出目によっては、負けだ。
ボードと赤葦さんの手の中にあるサイコロを交互に見つめて祈った。
私は多分、木葉さんに会いたいから真剣になれた。
だから、出ないで欲しい。
そう思った出目程、出てしまうもので。
ただ、その後のコマの置き方がおかしかった。
「…なんで。」
「何が?」
「なんで、こうしなかったんですか?」
私が想像していた、赤葦さんが勝てる形にコマを置き直す。
「あぁ、そのテがあったね。いいの?勝負が終わる前に教えて。」
「赤葦さん、私の手札分かってますよね。もうサイコロを振らなくても、私の手番が来たら勝つの、分かってますよね。」
赤葦さんの言葉に違和感がある。
わざとらしい感じがした。
「…そうだね。りらの番、だよ。終わらせてくれる?」
その言葉は、勝負の終わりを願うものじゃないと分かった。
赤葦さんは、自分の気持ちにも決着を付けさせて欲しいと願っている。
勝って木葉さんに会いたいと示して、諦めさせてくれ。
そう、言っているんだ、この言葉は。
その証拠に、サイコロを差し出す赤葦さんは負けそうなのに笑っていて。
私が勝つように仕向けられていたと気付いた。