第1章 始まり
少しの間を置いて玄関に走ってきているだろう、ドタドタとした足音が聞こえる。
勢いよく開いた扉から現れたのは見知った顔。
「…木兎、さん?」
「おぉっ!俺の事知ってんのか!?俺って有名人ー!」
「お邪魔します。」
一人で喜んでいるその人をスルーして玄関から上がる。
慣れた廊下を歩いてリビングに入った。
「あ、おかえりー。早かったね。」
私がすでにこの家の住人であるかのように話す家主がソファーに座っている。
リビングには他に3人の男性が各々寛いだり、食事を摂ったりしていた。
「おかえり、じゃない。」
苛立ちを表して低い声で言いながら家主に近付く。
「りら、怒ってる?」
当たり前の事を聞いてくるその人に更に腹が立ち、座っている為、自分より低い顔を見下ろした。
「怒ってる。」
ゆっくりときとりちゃんが立ち上がり、今度は逆に見下ろされる。
流石は元バレー選手。
同じ女なのに、血も繋がっているのに少し身長差がある。
私だって女性にしては大きい方の筈なのに。
いや、そんな事を考えている場合じゃない。
どうせ、従う羽目になるのは目に見えているけど、嫌なんだ、という感情は伝えないと。