第30章 執着心への執着心(赤葦エンディング)
皆で暮らしていた家から徒歩10分程の場所に赤葦さんは住んでいる。
衣食住の中でも特に住にはあまり拘りがないようで、狭くて少し古いアパートだ。
他の元同居人に比べると、身長は低かった赤葦さんでも一般的には大きな方の部類な訳で、窮屈そうに見える。
その家に週一から二で、通うのが私の生活だった。
月島くんが宮城に帰る選択をした時、2人きりにはならないように気を遣って家を出た赤葦さんだけど、食生活に自信がないから、と合鍵を無理矢理渡された。
毎月、一緒に暮らしていた時のように食費を支払うから時々ご飯を作りに来て欲しい、と。
家も近いし、木兎さんや黒尾さんはよく来るんだから、食べにきてくれた方が有り難いんだけど。
木兎さん達が来る日は顔を出してくれても、普段は別居した意味が無くなるくらい通いそうだから、なんて言って1人では来てくれない。
そんな訳で本日も赤葦さんのアパートに上がり込んでいる。
キッチンも狭くて作業を重ねられないのが困るけど、誰かの為に食事を作るのは好きだから嬉しかったりする。
ご飯作って、足を伸ばしたらぶつかってしまいそうなくらい狭いテーブルで一緒に食べて、少しお酒を飲む。
そして、帰る前には…。
「りら、一回どう?」
そう言って毎回誘われる。
体の関係とか、下品なものじゃない。
赤葦さんが誘ってくるもの…それはテーブルゲームだ。