第29章 ○○のような存在(黒尾エンディング)
‐黒尾side‐
さっきあった、突然の木兎からの電話。
『黒尾のバーカバーカ!彼女なんか作りやがって!りらちゃん、カワイソーだろーが!』
しかも、これだけ言って切りやがった。
意味分からん。
彼女なんか出来た覚えもねぇし。
あ、まさか今日の見られてたか?
別にアレ、彼女じゃねーっつか、友達の嫁なんだけど。
りらへの、プレゼント選びに付き合って貰ってただけだ。
一緒に買い物行った時に見た、アイツの財布が出会った頃のと同じで。
凄ぇボロボロだったから、新しいの、プレゼントしてやりたかった。
ただ、高額な物を嫌うりらがブランド財布なんか受け取る気はしねぇし。
かと言って、安物は見るからにオバサン臭いもんが多くて。
迷いに迷って、人の嫁を頼った訳だ。
溜め息を吐いて、ラッピングされた箱を見る。
誕生日だとか、クリスマスだとか。
理由がなきゃプレゼントなんか受け取らねぇ事も、分かってる。
それでも、今日渡さなきゃ駄目な気がした。
それを持って家を出る。
向かった先は勿論りらのトコ。
辿り着いたその場所で、りらは泣いてた。
木兎から、俺が女と居たって聞いて泣いてんのか。
そんぐらいで、何で。
いや、何で、じゃねぇだろ。
自信過剰かも知れないが、最近のりらは俺に懐いてた。
合コン事件以来、だったか。
俺を、完全に甘えていいと認めてくれてた。
そんな兄みたいな存在の俺が、取られると思ったんだろうな。
取り合えず、抱き締めて、撫でてやって。
泣き止んだら、今日の事を話して、コレ、渡してやろう。
「…黒尾さん。今日、一緒に居た人…誰ですか。」
目の前まで行った時に聞こえた、震えるりらの声。
分かったのは、今日の現場を見たのは木兎じゃなくてりらの方。
そういや、木兎の性格からして、俺を見掛けりゃ声ぐらい掛けんだろ。
なんで気付かなかった、俺。
‘お兄ちゃん’を取られる現場、目の当たりにして、耐えらんなかったんだな。
大丈夫だ。
俺は、お前だけのものだから。
本当は‘兄’じゃなくて、‘男’として。
お前だけのもんになりてぇ。
その気持ちを隠す為に、抱き締めるのは止めて、ただ頭を撫でるだけにした。