第29章 ○○のような存在(黒尾エンディング)
「黒尾さん達のお陰です。皆さんがいるから、私は我慢ばかりしなくて良い事を知りました。皆さんが笑い掛けてくれるから、自然に笑えるようになってきたんです。」
素直な、感謝の気持ち。
有難う、だけじゃ伝えきれないから、出来るだけ言葉にする。
「…りらは、まだ生まれたばっかの赤ん坊と一緒だろ。」
「もう26年生きてますが。」
「子どもってな、親を真似て表情や感情を覚えるんだと。そういう意味じゃ、妹達に親の愛情も感情も取られて生きてきたお前は子どもと一緒だろ?」
頬から指が離れて、また頭を撫でられた。
それこそ、子どもにするようにわしゃわしゃと髪を荒らされる。
黒尾さんは何というか、包容力のある人だと思う。
年齢でいえば2つしか変わらないのに、大人って感じがする。
人を護る事、甘やかす事、怒る事、そういったものがとにかく上手いのだ。
だから、子どもにやるみたいな褒め方が不快にはならない。
寧ろ、もっとして欲しいと思う。
頑張るから褒めて、いけない事をしたら叱って、いつでも味方でいて。
そんな、子どもが親に求めるような愛情を、黒尾さんに求めている自分に気付いた。
…それ以来、黒尾さんは、私にとって‘兄’であり‘父’。
今までも、親みたいだとは思っていたけど、完全にそう位置付けてからは甘えて良い存在。
そう思っている筈だった。