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第29章 ○○のような存在(黒尾エンディング)


店を出て、横に並ぶ。
バイト先が絡むなら手助け出来ないと宣言したクセになんで助けてくれたのだろうか。

「黒尾さん、何でですか。」

細かく言わなくても分かってくれると思って問い掛けた。

「アレはバイト先のヤツじゃねぇだろ?あぁいうヤツは、合コンの度に女食い荒らして嫌われてんだよ。持ち帰れなかった事をグチグチ言うだろうが、誰も相手なんかしねぇから気にすんな。」

思った通り意図を理解して答えてくれる。
昔から、私の事を私自身より分かってくれている人だった。
離れて暮らすようになった今でも、そうであってくれた事は嬉しい。

会話が止まって歩く足音だけが聞こえる中で、不意に頭を撫でられた。

「よく出来ました。」

上から降ってきた声が優しくて、顔を見上げる。

「ちゃんと言えたな。嫌だって。」

まるで、小さな子どもを見ているような優しい笑顔がそこにあった。

「…有難う、ございます。」

安心して、自分も自然と笑えた。
助けてくれた、私が頑張って拒否を口にした事を見てくれていた、その2つに対してのお礼。

「お。今日はやけに素直じゃね?」
「私をなんだと思ってるんですか。感謝したらお礼くらい言いますよ。」
「そりゃ、マジメなりらちゃんが助けて貰ったお礼言えないコじゃねぇのは分かってマスけど?
そっちじゃなくて、顔だ、顔。表情。」

頭を撫でた手が滑るように下りてきて、頬を摘まれる。
指摘されなくても最近は昔より表情が豊かになっているのは分かっていた。
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