第29章 ○○のような存在(黒尾エンディング)
とある日のバイト先での出来事。
勤め先のスーパーの更衣室で帰り支度をしていると、普段は会話なんかしないレジスタッフの女の子達に話し掛けられた。
なんでも、合コンの面子が足りなくなったそうだ。
一度は断ったけど、本当に困っているらしく何回も頼まれて、渋々了解した。
女の子達は大学生で、20歳になったばかりだそうだ。
若い子に混ざったアラサー女。
自分で考えてもイタイ。
別に男漁りしたい訳じゃないけど。
連れていかれた居酒屋で、先に来ていたらしい男性のいる場所に案内される。
その途中、他の席に座っている団体客の内の1人が目に入った。
昔は寝癖だと聞いていた、今はセットしてわざわざ作っているらしい特徴的なトサカ頭。
周りより頭一つ大きい背丈。
聞こえてくる声も間違いなく知り合いで。
気付かれたら、説教でもされそうだったから顔を背けて通り過ぎる。
元々、声は大きくない。
奥の席を選んで座ればきっと見付からない。
そう思って、上手く通路側から離れた位置に座れた所までは良かった。
目の前の男に気に入られてずっと話し掛けられる羽目になるまでは。
答えなきゃならない質問としての話をずっとされているのは苦痛で、早くも帰りたくなってきた。
嫌々話をしている私を見て提案されたのは席替えで。
今度は通路側の席に座る事になった。
さっきまでは女3人と男3人、別れて対面に座っていたのに今は隣に男の子。
馴れ馴れしくて苦手なタイプの人で、当たり前のように私の膝の上に手を置いて話し掛けてきていた。