第28章 諦めない気持ち(木兎エンディング)
家族みたいだった輪が無くなって、木兎さんと私だけが残される。
何となく、話しづらくて、恥ずかしくて、下を向いて歩いていると手を繋がれた。
「こうしたら、並んで歩けるだろ?」
昔も、言われたような記憶がある言葉なのに、心臓が破裂しそうだ。
ずっと、並んで歩きたい。
だから、ちゃんと、関係を築きたい。
「…木兎さん。」
やっと、出た声は少し震えてた。
木兎さんが、こちらを向く。
「なんだ?」
こっちを見ないで、言えなくなるから。
そんな心の声は届かず、金色の瞳に私が映っている。
「…仕事、何してるんですか。」
違う、これじゃない。
気になっているけど、今言いたいのは、これじゃない。
「ジムのインストラクターだな。」
「そうですか。」
話が続かなくて良かった。
気を取り直して、深呼吸する。
「なんで、小学生のコーチを?」
だから違うって。
これも気になってはいるけど、違うんだって。
告白なんて、した事がないし、緊張のしすぎで思った事が喋れない。
「ジムで会った人が、さっきの生徒の母ちゃんなんだ。春高までいった話したら、是非!って。
俺、そういうの持ってる人間だろ?なんつーの?運?」
確かに、なんて納得してる場合じゃない。
こんなに覚悟決めてるのに言えないなんて、引き伸ばしたら、絶対無理だ。
「それに、俺、好きな事は諦めねーシュギっつったろ?」
なんとか、きっかけを探そうとしていると、最適なワードが出た。
これで言えなかったら、意気地無しなだけ。
臆病で、恋が出来ない私に逆戻りする。
だから、言わないと。
「…それは、私の事も、ですか。」
皆と険悪になって、家出した日。
木兎さんは言った。
いつか俺のもんにする、って。
それも、諦めてませんか。
私の事、まだ好きですか。
沈黙が、怖い。
早く、何か言ってくれ。
顔なんか見ていられなくて、繋がれた手に視線を落とす。
この手を、離したくない。
手汗をかいていて、恥ずかしかったけど、気持ちを表すように強く手を握った。