第2章 明くる日
残された木兎さんと私。
すでに食べ終わってた木兎さんが私の皿に残るハンバーグを見ている。
「食べて良いですよ。私、片付けしてますので食べ終わったらカウンターに乗せて下さいね。」
半分ほどの残り物を皿ごと木兎さんに渡して、空いた皿を持ってキッチンに戻った。
キッチンで皿を洗っていると後ろに感じた気配。
この家に私以外でいる人間は一人で、誰かは分かっている。
「…何か用ですか?」
振り返らずに問い掛けると、横から伸びてきた手。
食べ終わった後の皿をシンクに置かれた。
「ごっそーさん。美味かったー!手際も良いし、りらちゃんはイイ嫁さんになるな。」
夢はお嫁さん、なんて可愛い事を言う年齢ではないけど、料理を褒められるのは嬉しくて口元が緩む。
「…有難う、ございます。」
「お?やっと笑ったな。」
素直にお礼を言った私の顔を覗いていたようで、にっと口を横に引いて笑う顔が視界の端に見えた。
特に何かを言い返す事もなく、手元にある洗い物を済ませると、夜の用意をしようと振り返った。
木兎さんはまだこちら側にいた。
「あの、用がないなら夜の準備をしたいのでキッチンから出ていって貰えます?」
邪魔なので、とは流石に言えないけど若干の威圧感を漏らしたようだ。
木兎さんは少しだけ肩をびくっと揺らし、リビング側に戻っていった。