第2章 明くる日
昼食の準備が終わると三人でテーブルを囲んで、一斉に食事が始まる挨拶を口にして食べ始める。
「うまっ!マジりらちゃん天才!」
「褒めても何も出ません。…付け合わせの人参も食べて下さい。」
私を褒めながら苦手な物を子どもがやるように人の皿に乗せる木兎さん。
すぐに気付いて人参を元の皿に戻した。
「木兎ちゃん人参食べられないんでちゅかー?テツローくんがあーん、してあげまちゅねー。」
「黒尾キモい。っつか、それだったらりらちゃんのあーん、のが良い!」
黒尾さんが木兎さんを煽ったようだが、見事に私が巻き込まれている。
今更、この程度で恥ずかしい事はないので、割り箸でさっと人参を摘んで木兎さんの口の前に出した。
「…あーん。」
「えっ!ちょっとは笑って!真顔は怖い、真顔は!怒んないで!ジョーダンだから!」
ふざけた事に怒ったように見えたみたいだが、素で私はこの顔だ。
黒尾さんは、私の感情表現が希薄なのを知って楽しそうに私達を見守っている。
笑顔を作る事すらせずに木兎さんの口へと人参を押し込んだ。
「木兎、抜け駆け禁止な?」
「黒尾が言うなよ。」
「センパイの事だったら、お前が来る前に別れてんだから関係ねぇだろ。」
「…黒尾さん、時間なくなりますよ。」
二人が何やら言い合いを始めそうだったので、話を切り換えるように口を挟んだ。
「…あ、やべ。」
時計の方を見て一言呟くと、そこから無言で食事を片付ける黒尾さん。
「ごっそーさん。悪い、片付け頼むわ。」
食べ終わるとすぐに立ち上がって言葉を残してバタバタと出ていった。