第28章 諦めない気持ち(木兎エンディング)
お酒を飲みながら食事をして、気付けば夜も遅くなっていた。
昔と変わらず、ペース配分もしないで飲んだ木兎さんは潰れてソファーで寝ている。
私は、一人でイライラと戦っていた。
あんまり話もしたくないから、適当に相槌だけ打って誤魔化すのも限界がある。
「…そろそろ、電車も無くなりますから木兎さん起こしますね。」
いい加減切り上げようと、立ち上がった。
木兎さんに近付こうと、歩こうとしたけど出来ない。
何でか、って。
先輩に手を掴まれているから。
その手が力任せに引っ張られて、簡単に先輩の膝の上に倒れた。
「キミさぁ、俺の愛人やらない?」
抱き締められるような格好で、耳元で囁かれる言葉。
よく似た事を、昔言われて人を殴った事がある。
でも、その時は立場が悪くなるのは自分自身で、どうにでもなる事だった。
今は、違う。
私が反抗したら、立場が悪くなるのは木兎さんだ。
我慢、すればいい。
どうせ、女だからって色々と、好き勝手に扱われてきた身体だ。
結局、私はこうやって、男に扱われるんだ。
救いは、誰かに恋をする前で良かったと思える事だけ。
諦めて、せめて何も見ないように目を閉じた。