第28章 諦めない気持ち(木兎エンディング)
木兎さんが、先輩を連れてくるらしい。
会社関係の人相手に断りでもしたら、木兎さんの後に響くと思って了解してしまった。
まぁ、やると決めたらやるのが私な訳で。
来るのは夕方頃と言われていたのに、朝から部屋の掃除等々張り切って。
結果…。
どこの居酒屋だよ、並の料理を作ってしまった。
掃除等々って言っても、私が一番張り切るのは、やっぱりコレのようだ。
作ってしまったものは仕方ないから、テーブルにきれいに並べていると、インターフォンの音が聞こえる。
慌てて時計を見ると5時を過ぎていた。
玄関まで行って、お出迎え。
木兎さんの先輩の第一声は…。
「…木兎、ドンマイ。」
だった。
木兎さんの肩をポンポンと慰めるように叩いている。
「な、なにがっすか?」
木兎さんの敬語って新鮮だ。
なんか、崩れてて変な言葉遣いになってるけど。
「こんな美女、お前と釣り合うワケねーだろ。」
と、いうか、この先輩も失礼だな。
人の見た目に感想言う前に挨拶くらいしろよ。
「…立ち話もなんですから、上がって下さい。」
礼儀がなってない、とか思っても木兎さんの先輩だ。
失礼な真似だけは出来ない。
笑顔を作って、リビングへと案内する。
隣を歩く木兎さんが、小声で謝ってきた。
確かに今は作り笑顔だけど、機嫌が悪いのは木兎さんの所為じゃない。
気にしないよう首を振って返した。
リビングに入ると先輩は、テーブルに並んだ料理に驚いていた。
あ、やっぱりやり過ぎたな。
なんて、後悔してたけど。
「相変わらずりらちゃんの料理ってスゲーよな!」
木兎さんの、この一言で後悔なんて吹き飛んだ。
「え?マジで、これ全部キミが作ったの?うちの嫁に見習わせたいわー。」
この先輩、苦手だな。
初めて会った人間の、もてなそうとする手料理を、ちゃんと作ったものか疑うとか。
どんな神経してんだ。
その後も、木兎さんのストレートな誉め言葉に若干嬉しくなっては、先輩の余計な言葉でイライラするのを繰り返していた。