第27章 それから。
断りたいし、怒りたい。
でも祝福ムードを壊すのは無理で、仕方なくスポットライトの当たる場所に移動した。
目立つの大嫌いなんだよ。
早く終わらせて頂きたい。
「姉ちゃん。幸せになって良いんだよ。」
花束を受け取ろうと手を出した時に聞こえた妹の声。
私は異性関係が乱れていたし、木葉さんを、好きな人を傷付け続けてきた。
だから、恋愛は元より幸せというものに対して臆病になっていた。
こんな話、妹にはしていなかったのに気付いたのか。
その上で、深く突っ込む事もなく一言で背中を押してきた。
気付かれていた事が悔しくて、でも妹なりに私の事を考えてくれたのが嬉しくて。
頷くと同時に涙が流れた。
「花嫁のブーケが嬉しくて泣いちゃってんのー?」
からかうような言葉が聞こえて、涙は一瞬で引いた。
でも、これも妹なりに考えて泣き止ませる為に言ったんだろうな。
「相変わらずイイ性格してるね。」
「こういうのは、性格が良いって言うんだよ。」
「…アンタの事、やっぱ嫌いだ。目立つのも、大嫌い。…でも、有難う。」
マイクを通していない私達の会話はBGMに隠れて。
こんな低レベルな言い合いをしているなんて、周りの誰も気付いてないだろう。
妹に背を向けて席へと歩く。
「ちゃんと、姉ちゃんの幸せ、見付けてね。きっと、凄く近くにあるから。」
そんな事を呟いた妹の声は、拍手の音に紛れて聞こえなかった。