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第26章 2度目のサヨナラ


‐赤葦side‐

木葉さんを追ったりらを止めようと立ち上がる。
でも、その動きは阻まれた。
他でもない、同居人達に。

「行かせてやって。赤葦も、分かってるでしょ?」
「木葉、りらが絡むと自信なくすけど、な。誰よりも長く、りらを想ってた。あの仕事続けてんのがイイ証拠だろ?」
「りらも、ずっと木葉さんばかり見てるんですよ。僕達は同居人で、異性として見られていない。あの人だけ異性で、恋愛対象なんです。」

そんなの、分かっている。
分かっていても、彼女を追い掛けたい。

「りらちゃんは木葉じゃねぇとダメなんだよ!」

衝動的に出ていきそうだった俺を止めた、木兎さん。
泣きそうな顔をして、叫ぶに近い声をあげた。

周りを見回すと、他の人達も同じような状態で。
皆さんも気付いているのだと悟った。

昨日見付けて、今朝この家に帰ってきたばかりのりらが、また家出をする事。
しかも、今度は帰れないって意地じゃない。
自分の意思で、一緒に居たい人を選んで出ていく。

それを分かって、わざと出ていくように仕向ける為に木葉さんを攻撃していたんだ。
ただ、排除したかっただけの俺とは違う。

「木葉だって、バカじゃねぇよ。自分が出ていけば丸く収まるって判断したのは、りらにとって俺等が大事だって分かってるからだろ。
りらが落ち着いたら、ちゃんと挨拶にでも来るって。」
「そうそう。だから、その時に笑って、おめでとうって言ってやれるように、さ。」

きとりさんが、酒の缶を差し出してくる。
他の面々にも同様に酒を渡していた。
月島と灰羽は未成年…なんて、突っ込みを思い付くのは、まだ冷静だからだ。

「今日は飲んで、騒いで、泣いて。何回でも、りらの事が好きだって叫んで。ちゃんと過去形にしなさいよ。家主からの命令!
…ってコトで。カンパーイ!」

周りが、缶を掲げてから飲み始める。

冷静さが残る、頭が導きだした答えは…。

この場の流れに乗る事だった。

出しっぱなしで、温くなった缶の中身を口に含む。

「…不味いっすね。」

りらとは関係がない、ただの感想を口から出す。

それでも、なんとか喉に流し込んで。

「本当に…不味い。」

それの所為にして、涙を流した。
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