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第26章 2度目のサヨナラ


木葉さんは噂を流した事実があるから言い返せなくなっているし、他の皆はその様子を窺っていて無言の時間が続く。

「なぁ、何が最低なんだ?」

意味が分かっていないリエーフの素朴な疑問の声が、静かな空間に響いた。

「君、話聞いてた?木葉さんはりらの悪い噂を流して、他の人にイジメさせたって分かってる?」
「それは聞いてた。けど、りらは嫌がってねーじゃん。勝手に皆が怒ってる意味分かんねーし。
そうやって怒んのは、りらが嫌がって助けを求めて来た時でいいだろ。最低とか、決めんのは、りらだ。」

リエーフはどこまでも真っ直ぐな男だ。
1つの迷いも見せずに嫌味ったらしい説明をした月島くんに言い返している。
こういう時、ただはっきりと自分の意見を言えてしまうのは羨ましい。

決めるのは、私。
それなら、答えは決まっている。

「木葉さんの事、私は最低とか思ってません。皆さんがどう思うかは、ご自身の決める事ですけど。私の為にやっているなら、それは‘必要ない’です。」

一度は木葉さんを何より傷付けたこの言葉を、今度はその人を護る為に使うなんて思ってもいなかった。

確かに噂を流したりとか、人を傷付ける事をした木葉さんは責められて然るべきなのかもしれないけど。
でも、危害を加えた、その一点に限って言うなら当事者である私が気にしていない。
寧ろ、そこまでして私と一緒に居る事を望んでくれたのは嬉しいくらいだ。
だから、私の名前をあげてそれを理由に責めるのは違うと思う。

「…熊野、もーいーよ。俺の為に怒ってくれんのは嬉しいが、自分がやった事が最低っての、分かってっし。
お前が大切にすんのは俺じゃない。お前を変えてくれたコイツ等。俺はお前を護るどころか、傷付けた。そんな男のコト、忘れちまえ。」

空気を変えるように明るい声を出して立ち上がる木葉さん。
自分の荷物の元に寄り、荷造りを始めた。

「お前等の輪を乱すようなコトして悪かった。過去の男はココで退場させて貰うな。」

それほど多くない荷物を纏めた大きめのスポーツバッグを肩に掛け、宣言通りリビングから出ていく。
その後をすぐに追った。
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