第26章 2度目のサヨナラ
中では宴会が続いていて、皆は普通に騒いでいる。
ストーカーとスピーカーの話は聞いていないように見えた。
「…それにしても、だ。どうやってセンパイとりらが親戚だって知ったんだよ?」
「あぁ、俺のバイト先の常連に熊野さんって男性がいるので。」
「…バイト先ってカフェだろ?りらちゃんのお父さんか何かか?」
「まぁ、そうですね。ウチ、ボードゲームカフェなので店員も相手したりしますし、話をする機会が多くて。俺が梟谷の出身だと話せばりらの情報出ましたし、バレーやってた話をすれば姪であるきとりさんの話も聞けました。」
「あぁ、オジさんボドゲ好きだもんね。一緒にやってくれる人は皆仲間ーみたいな感じで話しちゃいそう。しかも、娘と同じ学校出身、近い親戚と同じ競技経験者じゃあ親近感沸いて口も軽くなるわ。」
「その分だと、バイト先もりら関連で決めたんじゃないですか?」
「そうだよ。りらの住所はすぐに分かったし、部活引退後は時間もあったから家族の行動パターンも調べて。」
見えた、だけだった。
何なの、この人達。
普通の事みたいに赤葦さんの話を聞いている。
ファミレスで聞いた話より深い話になってるけど、今更ドン引きなんか出来なかった。
「そいや、俺に不動産屋紹介してきたのも赤葦だったよな。アレも仕組んだか?」
「アレは賭けでしたけど。2人が知り合いなら少しは話もするでしょうし、偶然装ってきとりさんに出会って知り合いになりたかったんです。まぁ、あまりにもイイ雰囲気だったので声は掛けませんでしたけどね。」
「うわ。じゃ、その日の内にクロをお持ち帰りしたの見られてたんだ。怖っ!」
口で言うほどには怖がっているようには見えないきとりちゃん。
他の同居人の面々も大した事とは思っていないようだった。