第26章 2度目のサヨナラ
元から体の大きい人達が、人1人分のスペースを空けて輪になっている状態は妙なものに見える。
何かを呼び出す宗教的な儀式でも始めそうな感じだ。
真ん中の料理が供物に見えてきた時点で、まともな思考能力は残っていない。
「迷うなら取り合えずソコ座って。何か、その2人の空気悪いから。」
仕切りたがりのきとりちゃんが指差した場所に腰を下ろす。
木葉さんと赤葦さんの間だった。
この2人はファミレスでの話以来、お互いを牽制するような感じになっている。
雰囲気がおかしい事は周りも勘づいているようだった。
「りら、はい。」
「熊野、ドーゾ。」
両脇から、別の種類の缶飲料が差し出される。
勿論、両方アルコールである。
私に缶を向けながらも、2人はお互いの顔を見ていた。
完全に競い合っている状態だ。
どっちかを選んだら、大変な事になる気がする。
「赤葦、ストーカーはストーカーらしく遠くから見守ってろ。接触したら何やらかすか分かンねぇんだから。」
「木葉さんこそ、裏で手を回すのに精を出してればいいんじゃないですか?スピーカー男は噂の収集に忙しいでしょう?」
どうしようか迷う内に、ついに始まってしまったストーカーVSスピーカー。
ストーカーとスピーカーって何か響きが似てるよ、似た者同士だよ、アンタ等。
違う、そんな事を考えている場合じゃない。
寝不足の変なハイテンションは顔に出ずとも頭を侵し始めている。
「赤葦がストーカーで木葉がスピーカー?なんか似てんな。」
呑気な木兎さんの声が聞こえる。
この人と同じような事を考えていた事がショックだ。
ショック受けてる場合じゃないけど。
このままだと、高校時代に何をしたかバレて2人が酷い目に合う。
しかも赤葦さんなんか、この家で暮らしてる時点で現在進行形な訳で、最悪追い出されてしまう。
何とかしようと掴んだのは2人の飲み掛けの缶。
開いていて中身が残っているソレを両手で1つずつ持ち、同時に勢い良く持ち上げた。