第25章 病的なまでの愛
‐月島side‐
昔の、夢を見たんだ。
言う程、昔じゃないケド。
僕達が2年の頃、東京に…梟谷に遠征に行った時の話。
梟谷には女生徒の幽霊がいる、って噂だった。
ただ、梟谷の生徒には見えないんだって。
バカじゃないの、その時の僕達って。
その女生徒が幽霊じゃないから、いないって梟谷の人達から否定されてただけなのにね。
まさか、それが生きている人間で一緒に暮らす事になるなんて思ってもみなかったよ。
そんな、昔の事を思い出してリビングに行くのが遅くなってしまったのが運の尽き。
そこにいたのは木兎さんだけで、他の人は出掛けてしまっていた。
この人と2人きりとか、勘弁してよ、もう。
相手しきれないから、昼食に行くって外に出たけどついてくるし。
取り合えず的に入ったファミレス。
目立った見目の良い3人組のテーブル。
りらは、赤葦さんの後ろに立っていて、見下すような視線を向けていた。
赤葦さんじゃなくて、もう1人の方に。
それで、気付いてしまった。
あの頃も、きっと、卒業していない筈の彼を探していたんだ。
校舎から校庭を見下ろす幽霊と言われた女生徒は、ずっと彼だけを見つめているんだって。
すぐに声を掛けられなかったのは、胸が苦しかったから。
今になって、この場に来たのはりらが困っていたから。
かと言って、喧嘩の仲裁は僕に向いてない。
「きとりさん達と一緒じゃないの?」
「私達は夕飯の買い出し。きとりちゃんは黒尾さんと出掛けてるんじゃない?」
話を逸らしてやるくらいしか出来なくても、少しは君の役に立った…かな。
「月島がきとりさんと一緒じゃない、と言う事は…。」
何かに気付いたような赤葦さんが、店内を見回す。
同席していた木兎さんが見えるように避けた所で…。
「りらちゃーん!」
デッカイ声が聞こえた。
赤葦さん、あの人の世話は貴方の役目です。
だから、場所を譲って貰えませんか。
せめて、少しでも長く傍にいたいんだ。
そう思ってしまう、自分の気持ちに気付いたって今更。
僕にしかない、武器があるって驕って、冷たく当たってたのも事実。
同級生って、他の同居人には使えない武器も意味がないって気付くの、遅すぎでしょ。
だってりらが見ているのは、同級生でも、同居人でもない、彼だけなんだから…。