第25章 病的なまでの愛
そんな話をした2人を、何故か怖いとは思えない。
特に木葉さんには噂を流されたりと間接的に危害を加えられているというのに。
寧ろ、孤独だと思っていた高校時代に想ってくれていた人がいる事実が嬉しい。
木兎さんや、リエーフみたいなストレートな好意は疑ってしまうクセに。
こんな異常な思考の好意はすんなりと受け入れられてしまった。
でも、その気持ちを受け入れる事と、応える事は違う。
2人とも、私が応えられないと解っているから、告白として言うつもりはないんだろう。
さっき、赤葦さんが言うのを止めてくれたのが、その証拠だ。
なら、私が答える言葉は1つだけでいい。
「有難うございます。」
少なくとも、昔の私を救ってくれた事についての感謝。
その言葉を口にすると同時に、ごく自然に笑えた。
2人は私が引く訳でもなく、嫌悪もしなかった事に驚いている。
「…熊野、気持ち悪いとか思わねぇの?」
「特には。」
「俺はともかく、木葉さんはりらに危害を加えたの理解してる?」
「解ってます。」
不思議そうに問い掛けられても、2人を嫌いとは到底思えなかった。
「オイコラ、そこのストーカー。自分はマシにしてんじゃねぇよ。」
「俺はりらに何かした訳じゃないんで。噂を流すとか、イジメ被害拡大させたアンタよりはマシですよ。」
「親戚の家に計算尽くで居座ったお前のが怖いぞ。俺からすれば。」
その話の流れのまま、2人は言い合いを始める。
どっちがマシか、なんて巻き込まれそうだから放っておこうかと思ったけど、生憎とこれから買い物にいかなければならない。
早めに止めないと時間が勿体無いと思った。
私の為に争わないで、って場面なんだろうけど残念ながらキャラじゃない。
かと言って、どちらかを庇うような言い方は止めた方が良いだろう。
誰か助けて欲しい。
「…赤葦さん、りら…と、ついでに木葉さん。」
「ついでとか何気に傷付くからな?」
私の願いが届いたのか、通路から降ってきた声。
見上げると、そこには月島くんが立っている。
言い方が気に障ったのか、威嚇している木葉さんを無視して私を見下ろしていた。