第25章 病的なまでの愛
そもそも、何で私の昔話をしていたんだろうか。
本当は私を前々から知っていた、と言わなきゃならない事でも起きたかな。
今まで、知らなかったフリをしていたのは、私の思い出したくない過去を隠してくれた、赤葦さんの優しさだろうに。
「木葉さんが言った、りらの動画が流出って、この話でしょう?…でも、俺、もっと前からりらの事を知ってました。
木葉さんが追い掛けてた差し入れの彼女が熊野りらって知ってましたから。」
赤葦さんは、そこで話を止めて振り返る。
気付かれてたのか。
まぁ、木葉さんの視線はずっと私に向いていたからな。
戻っておいで、とでも言うように手招きする赤葦さんに誘われて席に着いた。
「…どこから聞いてたの?」
「木葉さんの、答え合わせー…の辺りからです。何の答え合わせですか?」
赤葦さんからの質問に答えて、こちらも質問を返す。
「俺がりらをいつから知ってたか、りらをどう思っているか。」
そんな話をしていたのか。
だから、あの事件を引き合いに出した木葉さんに合わせて話さざるを得なくなった、と。
私が席を外した途端になんでそんな話になったのか、分からないけど。
聞いたって理解出来なさそうだから黙った。
「…で?いつから熊野を知ってたか、は分かったが…どう思っているかは答えねぇの?」
「好きですよ?あぁ、ライクじゃなくてラブの意味で。」
「おまっ!サラッとしすぎじゃね?」
私も気になりはしたけど、自分で聞ける事ではなくて黙っていると木葉さんの声。
これにもあっさりと、何でもない事のように答える赤葦さんに、木葉さんまで驚いていた。
「どうせ、貴方しつこく聞いてくるんで、誤魔化すのは無意味でしょう?」
「まぁ、確かに。でも、さっきのと微妙に話繋がってなくね?予想より前から熊野を知ってた、のは分かったが、何でそこまで執着するようになったんだよ?」
木葉さんが言っている事はもっともだと思う。
事件より前から私を知っていようが関係ない。
だって、私の心情を知らなければ、学園の評判を落とした動画を作った主犯、なのだから。
寧ろ嫌われていて当然ぐらいの事件だった。