第25章 病的なまでの愛
‐木葉side‐
「…赤葦、さっきの意味分かってるか?」
熊野の姿が見えなくなると、目の前の男に問い掛ける。
気になっていた事が、あったから。
「何がですか。」
「俺‘達’のもの。自分も近付けなくなんの、分かってんの?」
スルーしようとしても無駄。
熊野に関わる事で、妥協はしたくねぇ。
「俺は…りらを自分のものにしたい訳じゃ…。」
「ウソ吐け。赤葦、熊野に対して執着ハンパねぇぞ?」
他の誰より、熊野を見てるヤツが何言ってんだ。
「何がしたいんスか。」
「んー…ライバルの確定?木兎はマジっぽいし、灰羽も熊野が好みドストライクな感じ、か…。黒尾は庇護欲?月島は…。」
「黒尾さん、りらの顔は好みかと。月島も最近はりらと仲良くやってるので、時間の問題かも知れませんね。」
わざと、他のヤツの名前を出す。
話を逸らそうとするのは、やっぱ何か知ってるからだろ?
まぁ、知らない訳もないんだが。
あんな事が、あったんだから。
「…お前は熊野の高校時代、知ってるだろ。だから、執着してんの?」
気付いてんだよ、と確信を笑顔に乗せる。
「……いえ。あの家で会うまで知りませんでした。」
「それもウソだな。今、反応遅れたぞー。」
少し間があった返答。
からかうように突っ込むと、赤葦が眉を寄せた。
「赤葦は嫌な顔する時だけは分かりやすいな。」
その顔を指差しで示すと、顔を逸らした。
多分、何を言っても答えないつもりだ。
じゃあ、あの事件の事を口に出してやろう。
「…熊野のイジメ動画、ネットに流出したんだってな。」
その途端、慌てたようにこっちを向いて、それ以上言うな、とばかりに睨んできやがった。
「俺が知ってるコト、ぜーんぶ話そうか?んで、答え合わせしようぜ?」
そんなもん、効かねぇよ。
軽く、挑発してみる。
お前の口から、話せよ。
裏でコソコソやんのは止めろ。
「アンタの変な妄想が入るくらいなら、自分で話します。」
それが効いたのか諦めたのか。
どっちかは分からないが、赤葦はやっと口を割った。
その後ろには、戻ってきた熊野が立ってる。
いっそ、赤葦が引かれて倍率落ちてくれりゃいい、とか思った自分は相当腐ってる事が分かった。