第24章 ただいまの後は…
‐きとりside‐
りらが怒って家を出ていった。
まぁ、怒らせたのもわざとで、その後を追う2人も止めない。
買い物に付き合わせるより、ご飯作っている方がりらは好きだろうし。
何より、この家では意思を、感情を表現していいのだと分かって欲しいから。
一緒に行った2人は病的と言える程にりらを大切にしてるから、きっと帰ってくる頃には機嫌も治ってる。
あぁ、でも。
赤葦は止めた方が良かったかも。
飲み会の時、あの赤葦がりら以外を眺めてたから。
今、一緒に出ていった木葉クンの事を。
「…なぁ、赤葦止めなくて良かったか?」
クロも同じ事を考えていたらしい。
「多分大丈夫でしょ。りらの前で木葉クン傷付けたら、どうなるかぐらい分かってるんじゃない?」
「ま、そうだな。」
りらの機嫌は木葉クンに左右される。
本人、無自覚なのが問題だけど。
クロも納得はしたようで、黙ってしまった。
「…センパイ、あのさ。」
何か考えるような時間を空けてから、沈黙を割る声。
「りら達、くっつけちまわね?」
いやいやいや、マテマテマテ!
そういうのは、自然の流れに任せろよ。
周りがキューピッドしてやらなきゃならない段階じゃないでしょ、あの2人は。
「放っといても、勝手にくっつく気がするけど。」
思ったまま出した返事。
だって、ホントにいつの間にか付き合ってそうだと思った。
「…何年掛かんだよ。」
「確かに。」
呆れたような息と共に吐き出された言葉には納得の一言。
だって、木葉クンはりらが絡むとネガティブで告白をする気配がないし。
りらに至っては、自分の気持ちを自覚すらしてない。
自然にそうなるのを見守ってたら、爺さん婆さんになってる気すらしてきた。
「やるか。」
一つ頷いて、やる気を表すように拳を握り締める。
クロも頷きを返して、2人で作戦会議を始めた。
りらが好きなのは木葉クンだから。
彼といるのがりらの幸せなら、それで良い。
この家から、りらが出ていく事になっても…。
そう思っていた私達の行動が、予想外の事をしでかす天然要素を持ったりらに通用する訳はなく。
一番彼女を傷付ける結果が待っていると、この時の私達は知らなかった。