第24章 ただいまの後は…
心底呆れたような、疲れたような溜め息が聞こえる。
「…熊野、相変わらず馬鹿なのな。」
確かに、学力でいうと私は馬鹿の部類だ。
そもそも九九すら出来ない時もある。
勉強をしてた頃に横で間違った数字をわざと言う妹に妨害されて、それを暗記してしまった過去があるからだ。
言い訳にしかならないけど。
でも、何で私の学力の話になるか分からない。
「何がですか。」
「割るなら5が正解。」
「返金するのは4人です。」
普通に会話しているつもりだが、何故かまた溜め息。
「お前な、自分だけ返金ナシってオカシイだろ。」
「…食費の管理してるの私ですから返金は4人で間違いないのでは?」
「いや、うん。返すのは4人でも配当を受ける権利はお前にもあんの。5人で出し合ってんのに、何で余りは4人で分けるんだよ?」
「数学の文章題とか苦手なのはご存知かと思いますが。」
一年の時、木葉さんに勉強を見てもらった事もあった。
だから、この人は私の頭の悪さを知っている。
説明の仕方が分からなくなったのか、木葉さんは頭を抱えてしまった。
「…うん、理解出来てないな。数学どころか、算数レベルが分からないって…。」
更に馬鹿にされた気はするけど、確かに足したり割ったりはまだ小学生のレベルの問題だ。
それすら、電卓がないと厳しい私には難しい話だ。
「…あー…。そいや、お前って今は無職だよな。前はドコ勤めてたんだ?」
「料亭。」
「何てトコ?」
説明を諦めたのか話題が変わる。
私が答えられるように質問のような形を取ってくれるのは木葉さんの優しさだ。
当たり障りのない、会話というか質問に答えているだけの状態で皆が起きてくるまで過ごした。