第24章 ただいまの後は…
確かに窓さえ開けられれば出ていくかもしれない。
でも、出ていかなくて部屋の中で死なれても困る。
どうにか取って貰いたくて部屋の外で騒いでいると、月島くんが出てきた。
「朝帰りで眠い時に何騒いでるんですか。あぁ、りらに夜這いですか?そんなの、この家の中で許されると思ってます?」
喋っている月島くんは不機嫌で、私の手を掴むとリエーフから引き離した。
「ほら、りらが隙だらけだからバカな男が寄ってくるんでしょ。その部屋だと他のバカも出てくるかも知れないから、僕の部屋で寝てたら?」
勘違いしたまま、私を隠すように2人の前に立つ。
「…いや、あの。」
状況を説明しようと口を開いた時、特徴的な虫の鳴き声が私の部屋からした。
音に反応して部屋の中を見た月島くんは躊躇無く入っていき、壁に付いた鳴き声の主を素手で掴む。
そのまま窓から外に出す姿を見て、思わず拍手した。
「…りら、君ってGは大丈夫だったよね?」
「あれだって苦手だけど。セミの方が無理。」
「…そう。一応、部屋の中見ておくケド。他にも入ってて騒がれたら迷惑だし。」
「…ごめん。」
嫌味なのはいつもの事だけど、迷惑を掛けたのは事実だから言い返せない。
呆れたような溜め息が聞こえた。
「…そこの役立たずは寝床に戻ってください。都会育ちの方ってセミすら触れないんですね。」
「りらの為なら出来るに決まってるだろ!ね、木葉さん?」
「…いや、俺はマジで無理。セミとか暴れっから怖いじゃん。」
どこか勝ち誇ったような笑顔で言う月島くん。
リエーフが言い返して木葉さんを巻き込んだけど、本当に駄目なのか首を振るのに必死だ。
情けない人だな。
「…へーぇ。りらの為なら出来るんだ?」
「当たり前だろ。」
月島くんとリエーフの言い合いは続いている。
部屋の中にいる月島くんの視線が、ベッドの方に向いていた。