第23章 仲直り
こちらはこちらで、やっぱり空気が重い。
木兎さんはしょぼくれたままだし、木葉さんは顔を隠したままで泣いてるようにも見えるし。
きとりちゃんは盛り上げようと必死で酒を勧めたり、2人に話し掛けている。
取り合えず、話が出来そうな黒尾さんと仲直りしようと手を出した。
「…仲直り、したいです。」
「俺、お前と喧嘩したつもりねぇけど?」
握手したいと意図を口にすると、いつもの胡散臭い笑顔で手を握ってくれる。
そのまま手を引っ張られて、黒尾さんの腕の中に倒れ込んだ。
「お前は1人で頑張り過ぎ。主従関係じゃねぇんだから、もうちょい主張してこいよ。黙って従うな。…りらの声、ちゃんと聞いてやるから。」
背中を撫でる手も、話をする声も、優しくて心地好さに負けて目を閉じる。
「黒尾!りらちゃん離せ!」
すぐに大きな声が聞こえて、安らげる時間はあまりなかった。
後ろから腹の辺りに腕が回ってきて引き離される。
前にもしょぼくれた木兎さんを復活させる為に私を使われた事はあるけど、同じような手に掛かるなんて単純だな。
「俺のが、りらちゃんのコト考えてるからな!全部聞いてやるし、絶対に味方だかんな!」
肩の上に顎を置き、超至近距離で話される声は、内容は嬉しいものだけど五月蝿い。
「…アンタ等、それ止めて。木葉クンがマジで死んじゃう。」
「木葉、死ぬな!生きろ!」
きとりちゃんの声であっさりと解放された。
木兎さん、今度は木葉さんに声を掛けるのに必死だ。
そもそも木葉さんが何故こんなに落ち込んでいるかも分からない私には声の掛けようがない。
「…熊野、俺もう死にたい。」
少しぶりに聞いた木葉さんの言葉は、あまりにも衝撃的だった。