第23章 仲直り
リエーフに握られた手の上に手が重なる。
その元を辿ると赤葦さん。
「灰羽、手、離して。」
「赤葦さんの手は握ってないすよ?」
「だから、りらの手を離してって言ってるんだよ。」
「赤葦さんもライバルっすか?りらは渡しませんよ。」
今度は何故か私の手を巡って赤葦さんとリエーフが話している。
離れないように強く握られて痛みを感じ、眉を寄せた。
「…君、好きなら嫌がってるのに気付いてあげたら?」
「え?嫌じゃないだろ?」
「こんな所に皺作ってるのを見て喜んでる表現だと思えるなら幸せだね。」
私の変化に気付いた月島くんの指先が眉間に触れて、その援護によって、やっと手が離れる。
自由になった筈の手は、すぐに赤葦さんに掴まれて支配された。
握手の形で手を繋ぎ、軽く振られる。
「避けた事、家出した事、全部引っ括めて、俺は怒ってないよ。こっちこそ、押し付けがましい事をしてごめんね。…これで、仲直りしてくれる?」
「…はい。」
赤葦さんの言葉にしっかりと頷いて、自分からも軽く手を揺らす。
その手をすぐに離して月島くんの前に差し出した。
「…月島くんも。あ、ありがとう。」
「ドーイタシマシテ。」
数分前の言葉に今更なお礼を言うと、緩く握手してくれた。
「ズリー!俺もりらと握手!」
空気を読まないリエーフは、ようやく緩んできた空気を簡単に壊してくれた。
月島くんの手を払い除けて強引に握手する。
「…君、いい加減にしてくれない?僕達の家の問題だから、今は首突っ込まないでくれる?」
月島くんが、不機嫌そうな笑顔でリエーフの手首を掴んで引っ張った。
お陰で離れた手をすぐに引っ込めて膝の上に置く。
「俺はりらが好きだから無関係じゃねーだろ。」
「家の事に関しては関係がないって分からないの?バカなの?あ、バカだったね。」
「りら、今の内に木兎さんと黒尾さんの所に行ったら?巻き込まれたら行けなくなるよ。ちゃんと仲直りしておいで。」
目の前で月島くんとリエーフが言い合いを始めて仲裁しようか迷っていると隣から声。
大丈夫、と背中を押すように優しく叩かれて、頷きだけ返すと元々座っていた木兎さんと黒尾さんの間に戻った。