第23章 仲直り
向かったのは、きとりちゃんの隣。
私が場所を移動すると、皆は一斉に黙った。
「…話す覚悟、出来た?」
沈黙を破ったきとりちゃんの声は少し低くて、怒っているのが分かる。
話し合い名目で、此処に来たのだから話す気がない訳じゃない。
ただ、自分からだと何を話せばいいか分からなかった。
「アンタ、面倒臭いよね。何があったの?って聞いて貰うの待ってるとか、子どもみたい。」
きとりちゃんの言う事は図星で、更に喋れなくなる。
でも、考えなきゃならない。
皆と向き合う為に、何から話せばいいのか。
どう言えば伝わるのか。
喋るのさえ苦手だから、間違えて誤解されるような事を言わないようにしないと。
考えれば考える程に、失敗する事しか思い浮かばない。
説明するの、苦手なんだよな。
何か言わなきゃいけないと分かっている。
少しでも緊張を解したくて、ピッチャーを両手で持った。
「酒に逃げるな。」
それすらも止められてしまって、また黙る。
「熊野さん、怖いっすよ。」
「灰羽、部外者は黙って。」
「部外者じゃねーっすよ。俺、りらが好きですもん。好きなコが困ってたら助けるもんなんで。」
リエーフの空気を読まない発言に皆が驚いていた。
そういえば、出会って数分で告白のような事を言ってきた人だったな。
私の顔だけが好きなんだろうか。
「…おー!よく言った、灰羽!そーだよな、好きなコ守んのが男の役目だよな!」
一人で本題とは違う事を考えている間に、空気を読まない人が増えた。
「だからってりらを甘やかしていい理由にはならないでしょ。」
「好きなコは甘やかすもんだろ?」
「じゃあ、アンタ達がりらの話を聞いて、私達に分かるように説明しなさいよ。出来んの?馬鹿2人で。」
「やってやりますよ、それくらい。」
「だな。りらちゃん、こっち来い。」
3人の矛先がこちらに向いた。