第23章 仲直り
その後、予想通り始まった言い合いは…。
「俺なんかりらちゃんにあーんして飯食わせて貰ってるし。」
「熊野、俺の事は名前で呼んだりしてくれんだぜ?お前なんか、いつまでも‘木兎さん’じゃねーか。」
なんというか、幼稚だった。
両方、要求されただけで私がやりたくてやった訳じゃないのに、よくもまぁ自慢のように言えるものだ。
「モテる女は大変だな。」
隣で黒尾さんが呟く。
聞いてるなら止めて頂きたいものだけど、この人の場合はノってある事ない事を言いそうで仲裁は頼まなかった。
「…光太郎、そろそろ止めて下さい。私が恥ずかしいです。」
「…お、おぅ。」
突然の名前呼びに驚いて木兎さんが止まる。
続いて自分の箸で近くにあったつまみを挟み、木葉さんの口の前に持っていった。
「木葉さん、あーん。」
「え、あ。おぅ。」
こちらも突然の事で事態を飲み込めていないようだ。
それでも、目の前に出されたものを口に入れた。
「同じ事をしたので引き分けですね。」
食べ物を木葉さんの口に運んで空いた箸を置く。
これ以上はやるな、とばかりに笑顔を作って威嚇した。
「熊野が笑った…。」
「りらちゃん、機嫌悪いと作り笑いすんだぞ。今、めっちゃ怖ぇ。」
「…マジか。」
「木葉のせーでりらちゃんに怒られた。」
「先に仕掛けたの木兎だろ。」
一度は呆気に取られて終息しそうだったものが、また始まりそうだ。
2人は無視すると決めて黒尾さんの方を向いた。
肩を震わせて笑っている。
「なんで笑うんですか。」
「天然って最強だな、と。」
何が天然なんだか分からないが、まだ笑ってる様子からバカにされているのは分かる。
本格的に苛々としてきたから、飲み物であるピッチャーを抱えて席を立った。