第2章 明くる日
二人の足音が聞こえなくなってからタオルを外して体と髪を拭く。
木兎さんがいた所為で余計な時間を取ってしまった。
髪が少し湿っているくらいは気にせず、服を着てリビングに向けた廊下を歩く。
「お前な、シャワーの音しただろ。なんで洗面所使ってたんだよ。」
「あんなすぐ出てくるとは思わねぇだろー。」
「大体、叫びたいのは裸見られたあっちの方だ。見てないフリしてやるとか…。」
「見たモンは見た。」
「出来ねぇ奴だよな。お前は。」
「アイツだって隠さなかったじゃんか。」
「お前に見られて固まってたんだろ。とにかく謝っとけよ。」
「俺、覗いた訳じゃねーじゃん。」
喧嘩、というか黒尾さんが説教してる声が聞こえた。
木兎さんは何で怒られているか理解してないようだ。
扉はまだ開けていないから私には気付いていないだろうけど、このまま説教され続けるのは不憫だよな。
洗面所の気配に気付かなかった私にも非はあるし。
扉を開けると二人はほぼ同時に私の方を向いた。
「お昼、何食べます?」
さっきの事には全く触れない。
無かった事にしようと行動で示したつもりだ。
「肉!肉食いたい!!」
説教でしょぼくれかけていた木兎さんは食べ物の話に目を輝かせた。