第22章 家出
黒尾さんは驚いた顔をしている。
私は相変わらず、その面での信用がないらしい。
「マジか。木兎がお前の部屋行ったのは知ってたからヤったもんかと。」
「…ヤってて欲しかったですか。」
「いや、じゃあ何でお前出てったんだよ?マジで俺等とケンカしただけって理由か?」
「…皆さん揃ったらお話しします。」
そこで話に区切りを付けて終わらせる。
黒尾さんと話している間、動きがなかった木葉さんが気になって横を見ると口元を手で覆い隠していた。
心なしか耳が赤いような気がする。
「木葉さん、どうかしましたか。」
「…見ないで。あー…なんか、超カッコ悪ィ。」
「うーわ、好きなコに褒められた中学生みてぇな反応。木葉、意外に純だなぁ。」
両手で完全に顔を隠してしまった木葉さんと、それをニヤニヤ笑いながらからかう黒尾さん。
私は言われた通り見ないように顔を逸らすと、調度良く座敷に上がってくる人達がいた。
こちらに真っ直ぐ向かってくる3人組。
1人だけ思いもしなかった人物がいて、目を擦った。
見間違えじゃ、ない。
なんで、いるの。
「遅かったな。木兎、赤葦、リエーフ。」
3人に気付いた黒尾さんが声を掛ける。
簡単に受け入れるって事は一緒にいるのを知っていた証拠。
さっきまで、リエーフの名前なんか一回も出てなかったのに。
「木兎に愛想尽かした可能性もある、っつったろ?リエーフは保険、な。」
成程、私が会話をしそうな人だからか。
なんて、納得している場合じゃない。
一体どこまで私の家出が広まってるんだ。
気になる事がありすぎて頭痛がしてきた。
「木葉、退けよ。りらちゃんの隣は俺だ!」
「…って!いきなり蹴るな!」
「木兎さんズリィっすよ。りらは俺のなんで。隣は俺です。」
更に頭痛の種を増やしてくれるのは、隣の席争奪戦。
先に座っていた木葉さんを退かしてでも座りたいらしい。
木兎さんは宣言通り、私を自分のものにする為だろうから理解出来る。
木葉さんも、ちゃんと言われてはいないけど好意を持ってくれているのが分かっている。
木兎さんが一方的にだけどライバルだって言ってたし、この2人の奪い合いは分かるんだけど。
「…リエーフ、いつ私は貴方のものになったの。」
問題発言しているこの人だけは理解出来なかった。