第22章 家出
…なんで、居酒屋だよ。
酒入って大丈夫、な訳ないよな。
不安を抱えて到着したのは、家から近いチェーン店。
あの公園自体、家に近かった事にすら気付いてなかった。
誰かに見付けて欲しい、と無意識に家から近い場所を選んでいたんだろうな。
皆に嫌われるのが怖くて逃げて、それでも探して欲しくて。
捕まって安堵しているのは内緒にしておこう。
入店して店員に後から来る人数を告げると、広めの座敷に案内された。
その部屋のテーブルを挟んで向かい合うように2人は座っている。
「熊野、こっち。」
「りら、隣来い。」
ほぼ同時に手招きされて、選んだのは味方してくれると言ってくれた木葉さんの隣。
黒尾さんは不貞腐れたように口先を尖らせているけど関係ない。
ちゃんと話もしていない現時点では、人の気持ちも考えずにただ正しい事を押し付けてきた人な訳だから。
取り合えず座ったはいいものの、会話はない。
私の話はきっと皆が来てからするべきだろうから、それについては何も言えない。
「…あの、何故2人は一緒にいたんですか。」
ただ待つだけの時間の沈黙は重く、恐ろしくて。
会話のきっかけになれば良い、と気になっていた事を問い掛けた。