第22章 家出
きとりちゃん、帰ってきてるのか。
何があったか、皆から聞いていたら私が殺されるレベルだ。
皆を避けて、木兎さんとは寝ようとして、理由も言わずに家から出ていった。
怒られて当然の事をしている。
本当に殺されはしないのは分かっているけど、何発か殴られるだろうな。
「…熊野、それで良いか?」
「…は?」
考え事をしていて2人の言い合いなんて聞いていなかった。
何か、決めたのだろうか。
聞き返すように木葉さんの顔を見る。
「だから、どっか外の店で皆と落ち合おうって。周りの目があった方が良いだろ?最悪、暴力は避けられる。」
私の事を考えてくれている提案だった。
頷いて了解を示すと繋がれた手をしっかりと強めに握られる。
「俺は善悪関係なく、熊野の味方してやっから安心しろ。」
「イチャつくな!」
耳元で小さく言われた言葉が嬉しくて、お礼を言おうと口を開いた所でそれは遮られた。
黒尾さんが手を離させようと繋ぎ目にチョップを入れる。
少し痛かったけど、木葉さんは離してくれなかった。
「男の嫉妬はみっともねぇぞー。」
「嫉妬じゃねぇよ!つか、フラれたクセにしつこいんだよ。」
「…正式に告ってないからフラれたワケじゃねぇ!」
また言い合いだ。
相性悪い2人だな。
なんで一緒にいたんだろうか。
待つ事数分。
やっと言い合いが収まった2人に何故か挟まれて、片方ずつ手を握られた。
こんな事をされなくても今更逃げようなんて思ってない。
その状態のまま、きとりちゃん達と待ち合わせているだろう居酒屋に連行された。