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第22章 家出


障害物なんて無かった筈だ。
直感的に人間だと悟った。

仲間がいたんだ。
周りをよく確認してなかった私が悪い。
何をされるんだろうか。
ヤられるくらいならまだマシ。
殺されたら、どうしようか。

「…クロ、遅い。」

物騒な考えが頭を巡っている内に後ろの人が追い付いてきた。
その声は、私がぶつかったであろう人を呼んでいる。
聞き覚えのある、呼び名だった。

「悪ィな、研磨。でも、まーさか、お前が見付けるとは思わなかったわ。今度、何か奢ってやるよ。」

聞こえた声も、完全に知っている人のもの。
恐る恐る顔を上げて確認すると、胡散臭い笑みを浮かべた黒尾さんが立っていた。

気付いて逃げようとした時には腕を掴まれている。

「ここ、近道なんだよ。…じゃあ、おれは帰るから。」
「おぉ、またな。」

ケンマと呼ばれたその人は、私達の状態なんかお構い無しにマイペースな口振りで話して去っていった。

「…りら、何か言う事は?」

私の方を向いた黒尾さんは変わらず笑っているけど、声は低くて怒っているのが分かる。
間違った事は言えない。

言いたくは無いけど、家出した理由を話せば良いのだろうか。
それとも喧嘩みたいな状態のままだから、単なる謝罪を求めているんだろうか。

「…喋るの苦手なのは分かるけどな、黙るのは止めろ。」

何の返答もしない私に苛立ちを隠せないようで、眉間に皺が寄っている。

「…無理に何か言わせたって仕方ないだろ。」

私を庇うように黒尾さんとの間に腕が入ってきた。
黒尾さんが大きいから、隠れて気付かなかったけど、もう一人いたようだ。
止められた事によって、やっと腕が離された。
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