第22章 家出
‐黒尾side‐
玄関の扉が開いた音は、気の所為だと思ってた。
ちょっと考えれば分かるのにな。
3人同時に聞く、空耳なんかねぇって事くらい。
誰も口に出さなかったが、玄関をほぼ同じタイミングで見たから、赤葦も、月島も聞いてた筈なんだよ。
なーんで、口に出さないかね?
きっかけがあれば、玄関を確認しに行ったし、アイツの靴が無くなった事に気付けたのに…。
一緒にいる奴等も俺も、眠くなんかなりはしなくて、リビングで朝まで起きてた。
取り合えず言い訳くらいさせろ、ってアイツを捕まえるつもりでいたんだ。
でも、昼を過ぎても姿を見る事は無く。
木兎に抱き潰されて、まだ寝てんのかと部屋を訪ねた。
ノックしても反応なし。
無視されてるかも知れねぇから、勝手に扉を開けて。
見えたのは空の部屋。
その時になって、やっと夜中に聞こえた扉の音を思い出す。
慌てて玄関を見に行っても、遅いのなんざ分かってる。
玄関には、予想した通り靴が無くて。
俺等がリビングに居たから、黙って買い物に出た可能性も考慮して、他のヤツには黙っていた。
…が、夕方過ぎても、夜になってもりらは帰って来なかった。